はじめに
国交省の平成30年度の「マンション総合調査結果」によると、完成年度の古いマンションほど空き住戸の割合が高くなる傾向があるとコメントしております。
空き住戸が発生・増加することにより様々な問題が想定されます。
これらの問題点と対応策について、2022年4月にマンション管理センターより「管理組合のためのマンション空き住戸対応マニュアル」が公表されました。
ついては、当該マニュアル及び後記の各種文献を参考にして、「空き住戸問題と対応策」に関する要点を以下の通り取り纏めました。
空き住戸発生の要因
- 新築マンションの空き住戸(売れ残り、転売目的等)
- 既存マンションの空き住戸(転勤等による長期不在、転売・賃貸の困難化、転居後や相続後の放置、高齢者施設等への入居、所有者の所在不明、相続人の不存在、相続人の未確定等)
空き住戸から発生する管理上の問題点
- 緊急時の対応の問題
- 専有部分内の火災
原因 : 非居住の状態でも一時的な居住者不在の場合でも、漏電等により火災は発生する。
対応 : 近隣住戸との協力による通報・避難・誘導・区分所有者への連絡、共用部分等への被害状況確認、保険会社への連絡
- 専有部分からの漏水事故等
原因 : 一時的な居住者不在の場合、老朽化による給水管の破損・脱着、屋上からの雨漏りが、非居住住戸への漏水
対応 : 給水元栓の停止、区分所有者への連絡、共用部分等への被害状況確認、保険会社への連絡
- 長期的に住戸が管理されないことによる問題
漏水事故や排水管の一斉清掃により専用部分に等に立ち入る必要がある場合
- 専用部分立入りへの対応(管理組合が共用部分の管理に影響する設備の点検や住戸内を経由しないと実施できない工事に支障を来します。)
(注) 管理計画認定制度では、マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入りについて規約化されていることが認定基準になっております。
- 専用使用部分の管理不全(専用使用権のある部分についての管理が適切になされないと、周辺への影響を来します。鳥の糞・雑草の繁茂・郵便ポストの投入物・排水口の塞ぎ等)
- 専有部分の管理不全(排水管の詰り・腐食や劣化による水漏れ等)
- 管理組合の運営面の支障
- 役員の成り手不足
- 管理情報の周知不徹底
- 組合運営への関心の低下、総会決議の困難
- 管理費・修繕積立金・使用料支払いのトラブル
- 使用料収入の減少
- 管理費等の滞納(区分所有者の所在不明、相続人の不確知等により請求する相手が見つからないときは、多大な労力と金銭的負担もかかります。)
空き住戸による問題点への対応策
- 空き住戸に対する届け出
- 入退去届 : マンションの入居時と退去時には、管理規約等により届け出を義務づける必要がある。
- 空き住戸の届け出 : 一定期間空き住戸にする場合は、使用細則により届け出を義務づけることが望ましい。
(注) 管理計画認定制度では、緊急時にも連絡が取れる区分所有者名簿を揃え、毎年更新することが認定基準になっている。
- 長期的空き住戸への対応
- 管理組合が点検・工事等を行う場合に、区分所有者が予め立合者を選定しておけば好都合となる。予め使用細則等に定めておくと便利である。区分所有者の協力が前提となる。
- 鍵の預かり
管理組合がカギを預かっておくことも考えられるが、予め規約等に定めておく必要があり、あまり現実的とは言えないもの思われます。
- 空き家管理サービスの利用
不在家主に代わって、空き住戸の防犯・換気・ポスト整理等を行う民間会社がある。また、管理会社が区分所有者と別途委託管理契約を締結する例もある。
- 管理組合の運営に関する対応
管理組合の運営方法により、リスクを回避・低減できる場合がある。
- 役員資格の拡大(役員資格に居住要件を付している場合、空き住戸所有者でも役員になれるよう、居住要件を廃止することにより、空き住戸の解消に繋がる。)
- 役員免除金の徴収(居住組合員に対する不公平感の解消・軽減を図るために、空き住戸所有者でも役員資格を得られるように管理規約を改正する。間接的に、役員就任への促進効果が期待できます。)
- 不在組合員協力金の徴収(前記②と同様の効果が期待できます。)
- 第三者管理等外部専門家の活用(活用により、管理組合運営を円滑化する。)
- 区分所有者の所在の確認
区分所有者の連絡先が不明になった場合、管理組合は弁護士等を通じて登記事項証明書の所在不明、入手などにより連絡先を明らかにする必要がある。これらの調査の結果、区分所有者の死亡等による相続が発生している場合は、弁護士を通じて相続人を明らかにする。
- 成年後見制度の利用
区分所有者が高齢者福祉施設に入居して空き住戸になった場合、本人の判断能力が不十分でそのまま放置される場合が想定される。
この場合、本人の代理、補佐、補助等を行う成年後見人、保佐人、補助人を選定することにより、本人を保護することが出来る。ただし、管理組合にはその資格がないので親族などに働きかける。
- 特定の者に有利な管理規約の変更(分譲時の管理規約案に未販売住戸の管理費等の支払減免等の改善も検討の余地があること。)
空き住戸を発生させないための対応策
- 住宅としての価値の向上( 住宅としての価値の向上により、マンション住戸の売却・賃貸の促進に繋がる。)
- マンション全体の資産価値の向上(共用部分の改修工事を適切に実施し、建物の機能や美観を維持する。)
- 専有部分リフォームの実施
- 利用用途の拡大(専ら住宅以外への変更となる場合は、慎重なる検討を要します。)
- 利用・処分に関する助言(利用・処分に関する知識不足を補完する為に、区分所有者に対する助言や情報提供を行ったり、専門家を紹介したりする取組も考えられます。)
- その他、相続に関する対応、リバースモーゲージの利用、リースバックの利用
おわりに
マンションの空き住戸問題は、高経年マンションの増加や住民の高齢化、相続の発生などにより、増加することが予想されます。管理組合としては、各種情報を駆使して、よりよい管理に向けての取組が必至なものと考えられます。